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ファミコンの音は、なぜあの音なのか — 5つの音源と、制約が生んだ技

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たった5つの「声」で曲を作る

ファミコン(NES)の音源は、5つのチャンネルしか持っていなかった。内訳は、矩形波(パルス波)が2つ、三角波が1つ、ノイズが1つ、そしてサンプル再生用のDPCMが1つ。同時に鳴らせる音は、原則この5つだけ。オーケストラどころか、片手で数えられる「声」で、メロディも伴奏もドラムも賄わなければならなかった。

役割分担は自然と決まる。よく通る矩形波の片方が主旋律、もう片方がハモリや対旋律。三角波は音量を変えられない代わりに低音がよく出るので、ベース担当。ノイズはピッチを持たない「ザー」という音なので、スネアやハイハットといった打楽器に化ける。あの懐かしい音色は、贅沢な選択の結果ではなく、限られた手札の最適配置だった。

「3和音」を1チャンネルで鳴らす裏技

ここで問題が起きる。和音を鳴らしたいのに、旋律用のチャンネルはせいぜい2〜3本しかない。コードを押さえるだけで音源が尽きてしまう。

そこで使われたのが「高速アルペジオ」だ。たとえばドミソの和音を出したいとき、1フレーム(約60分の1秒)ごとにド→ミ→ソ→ド…と猛烈な速さで音を切り替える。すると耳は個々の音を追いきれず、ひとつの濁った和音として聞いてしまう。あの独特のブブブッとした響きは、足りないチャンネルを時間で水増しした産物だ。制約が、そのまま音色の個性になっている。

今これを作るなら

チップチューンを自分で作るときも、この発想はそのまま効く。まず音色を増やすより、4〜5の役割(旋律・ハモリ・ベース・打楽器)を決め切る。和音が欲しければ重ねるのではなくアルペジオで匂わせる。パルス波はデューティ比(波形の幅)を変えると音色が変わるので、1チャンネルで複数の楽器を演じ分けられる。音量を時間で絞る「エンベロープ(ADSR)」を付ければ、減衰する弦のような表情も出せる。

豪華な機材より、制約を決めてから手を動かすほうが、らしい音には早く近づく。まず短いループを1つ鳴らしてみる——そこから足し引きしていくのが、結局いちばんの近道だ。

お役立ち情報

  • 📄 ニコニコ大百科 - ファミコン音源
    • ファミコンに内蔵されたAPUの矩形波、三角波、ノイズ、DPCMの挙動や技術的な制約、拡張音源について極めて詳細にまとまった日本語のリファレンス記事。
  • 🛠️ FamiTracker
    • 実際のファミコンに内蔵されている音源チップ(NES APU)の制限に準じたチップチューン音楽を制作できるツール。

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