直感に反する確率の罠「モンティ・ホール問題」:扉を変えるべき数学的理由を明快に解説
人間の直感は、時に数学的な確率と驚くほど矛盾することがあります。その最も有名な例が、1990年にアメリカで大論争を巻き起こした確率パズル「モンティ・ホール問題(Monty Hall problem)」です。
「IQ228」の天才女性コラムニストが提示した正しい回答に対し、ノーベル賞受賞者を含む多くの数学者たちが「彼女は間違っている!確率は五分五分だ」と猛反抗のレターを送り、のちに自分たちが間違っていたことを認めざるを得なくなったという逸話を持つこの問題。なぜ直感が裏切られるのか、その理由を明快に解説します。
モンティ・ホール問題のルール
問題の設定は、あるテレビのクイズ番組の最後に行われるゲームです。
- プレイヤーの前に**3枚の扉(A、B、C)**があります。
- 1枚の扉の後ろには**景品の新車(当たり)が、残り2枚の後ろにはヤギ(ハズレ)**がいます。
- プレイヤーがまず1枚の扉を選びます(仮にAとします)。この段階ではまだ扉は開けません。
- ここで、すべての後ろに何があるかを知っている司会者のモンティが、残りの扉(B、C)のうち、ヤギ(ハズレ)がいる扉を1枚開けてプレイヤーに見せます(仮にCを開け、そこにヤギがいたとします)。
- 司会者モンティはプレイヤーにこう問いかけます。「扉をBに変えますか? それともAのままにしますか?」
さて、プレイヤーは扉をBに変えるべきでしょうか? それとも、変えても変えなくても確率は同じでしょうか?
直感の罠:「残ったのは2つだから 1/2」の誤解
多くの人が直感的に「残った扉はAとBの2つだから、確率はどちらも $1/2$(50%)で、変えても変えなくても同じだ」と考えてしまいます。数学者たちの多くも、この直感に囚われてしまいました。
しかし、数学的に正しい結論は、**「扉を変える(Bにする)と、当たる確率は $2/3$ (約66.7%)になり、変えない(Aのまま)場合の確率 $1/3$ (約33.3%)の2倍になる」**です。したがって、プレイヤーは絶対に扉を変えるべきなのです。
なぜ確率は「倍増」するのか?
この謎を解く鍵は、司会者モンティの「必ずハズレの扉を開ける」という行動にあります。彼の行動には、意思と情報が関与しており、これが最初の確率を変化させます。
すべてのパターンを書き出してみると、その理由が非常にクリアになります。最初に選んだ扉Aの後ろが何であるかによって、以下の3つのケースが考えられます。
出典: www.kaboompics.com / Pexels
- ケース1:扉Aの後ろが「車」(確率 $1/3$) モンティは残るB・Cのヤギのうち、どちらかを開けます。 ここであなたが**「変える」とハズレ(ヤギ)になり、「変えない」と当たり(車)**になります。
- ケース2:扉Aの後ろが「ヤギB」(確率 $1/3$) モンティは残るCの「ヤギC」を開けるしかありません(車を開けてはいけないルールのため)。 ここであなたが**「変える」と当たり(車)になり、「変えない」とハズレ(ヤギ)**になります。
- ケース3:扉Aの後ろが「ヤギC」(確率 $1/3$) モンティは残るBの「ヤギB」を開けるしかありません。 ここであなたが**「変える」と当たり(車)になり、「変えない」とハズレ(ヤギ)**になります。
以上の3つのケースをまとめると:
- 「変えない」選択をした場合:当たるのはケース1のみで、確率は $1/3$。
- 「変える」選択をした場合:当たるのはケース2とケース3の両方で、確率は $2/3$。
つまり、最初に選んだ扉が「ハズレ(確率 $2/3$)」であった場合、司会者がもう1枚のハズレを強制的に取り除いてくれるため、変えるという行動を取ることで、最初のハズレの確率がそのまま当たりの確率に反転するのです。
扉を100枚に増やして考えてみる
それでも腑に落ちない場合は、扉の数を100枚に増やした極端な例を考えてみましょう。
- あなたは100枚の扉の中から、1枚(A)を選びます。この時点で車が当たる確率はわずか $1/100$(1%)です。残りの99枚の扉のグループ(B)に車がある確率は $99/100$(99%)です。
- ここで、中身を知っている司会者が、残りの99枚のうち**「ハズレ(ヤギ)の扉98枚」をすべて開けて見せます**。残ったのは、あなたが選んだAと、司会者が開けずに残した1枚(仮にB-42)だけになりました。
- 司会者が「B-42に変えますか?」と聞きます。
この時、B-42に車がある確率は依然として $99/100$(99%)のままです。なぜなら、司会者が「ハズレを98枚開けてくれた」ことで、Bグループの持つ99%の確率が、開けられずに残された1枚の扉(B-42)にギュッと凝縮されたからです。これなら、迷わず「変える」べきだと直感的に理解できるはずです。
まとめ
モンティ・ホール問題は、確率における「条件付き確率(ベイズの定理)」の本質を示しています。司会者の行動によって、隠されていた情報の一部が暴露され、選択肢の価値が非対称になったのです。
直感がいかに確率の罠に引っかかりやすいかを知ることは、不確実なビジネスや日常の決断において、データに基づいて冷静に判断を下すことの大切さを教えてくれます。
お役立ち情報
- 📄 MathWorld - Monty Hall Problem (英語)
- ウルフラム・リサーチが運営する数学百科事典。モンティ・ホール問題の数学的定義や証明、確率ツリーを用いた詳細な解説が掲載されています。
- 📄 日本数学会 公式サイト
- 日本国内最大の数学学会。確率・統計の面白さや数学教育に関する情報、市民向け講演会のアーカイブ等が公開されています。
- 📄 Khan Academy - Conditional Probability and Bayes’ Theorem (英語)
- カーンアカデミーによる無料学習コース。モンティ・ホール問題を解くための基礎数学である「条件付き確率」と「ベイズの定理」を基礎から学べます。
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