高層ビルを揺らす長周期地震動とは?地球科学から紐解くメカニズムと身を守る防災知識
地震が発生したとき、震源から数百キロメートルも離れた都市部の高層ビルが、ゆっくりと大きく、そしていつまでも揺れ続けることがあります。この現象を引き起こすのが「長周期地震動」です。一般的な地震の揺れとは異なる特性を持ち、高層化が進む現代都市において非常に重要な地球科学的トピックとなっています。今回は、その発生メカニズムと、私たちが高層ビル内で身を守るための実用的な防災知識を解説します。
なぜ遠くの高層ビルだけが揺れるのか?
地震が発生すると、地面はさまざまな周期(1往復する時間)で揺れます。このうち、周期が約2秒から20秒と長い揺れの成分を長周期地震動と呼びます。
周期が短い一般的な地震動は、震源から離れるにつれて急速に減衰し消えていきます。しかし、長周期の波は減衰しにくく、遠くまで伝わる性質があります。さらに重要なのが「共振(きょうしん)」現象です。すべての建物には、揺れやすい固有の周期(固有周期)があります。一般的な木造住宅の固有周期は0.1〜1秒程度と短い一方、高さ100メートルを超える高層ビルや大型の橋梁などの巨大建造物は、固有周期が数秒以上と長くなります。この建物の固有周期と、伝わってきた長周期地震動の周期が一致したとき、建物はエネルギーを吸収して大きく揺れ始めます。これが、遠方の高層ビルだけが激しく揺れる仕組みです。
巨大な「地球のスピーカー」:堆積盆地の共振現象
長周期地震動は、単に震源から伝わるだけでなく、特定の地質構造によって増幅されることが知られています。それが「堆積盆地(たいせきぼんち)」です。
関東平野や大阪平野、濃尾平野などは、固い基盤岩の上に、川から運ばれた砂や泥などの柔らかい「堆積層」が厚く積もってできた盆地状の構造をしています。地震波がこの柔らかい堆積層に入ると、波の速度が遅くなると同時に、基盤岩との境界で反射を繰り返します。この反射によって地震波が盆地内に閉じ込められ、干渉し合うことで、長周期の揺れがさらに大きく、そして長時間にわたって持続するようになります。地球科学において、平野部は巨大な「お椀」のようなものであり、その中のゼリー(堆積層)がいつまでも揺れ続けている状態に例えられます。
気象庁の「長周期地震動階級」と実用的な防災対策
高層ビル内での被害を防ぐため、気象庁は「長周期地震動階級(1〜4)」を設定し、緊急地震速報や観測情報の提供を行っています。
- 階級1: 室内でほとんどの人が揺れを感じる。ブラインドなどが大きく揺れる。
- 階級2: 室内で大きな揺れを感じ、物につかまらないと歩くのが難しい。キャスター付きの家具が少し動く。
- 階級3: 立っていることが困難になる。固定していない家具が移動し、倒れることもある。
- 階級4: 立っていることができず、はうようにしないと動けない。固定していない家具の多くが倒れ、移動する。キャスター付き家具が激しく暴走する。
高層ビルの上層階にいるときに長周期地震動を感知した場合、家具の転倒や「凶器化する移動物」から身を守ることが最優先です。オフィスや自宅では、キャスター付きのコピー機やテレビ台を必ずロックし、本棚などの高重心な家具はL字金具で固定する実用的な対策を行いましょう。また、エレベーターは地震動を検知して最寄り階に自動停止するシステムが普及していますが、揺れを感じたらすぐにすべての階のボタンを押し、最初に開いた階で降りて安全な場所に避難することが重要です。
地球科学的な地盤の特性を正しく理解し、高層都市ならではの防災備えを進めていきましょう。
お役立ち情報
- 気象庁 長周期地震動について: 長周期地震動の仕組みや、発表される情報の見方をわかりやすく解説している公式FAQページ。
- 防災科学技術研究所(NIED) 強震観測網(K-NET/KiK-net): 日本全国の地震動をリアルタイムで観測・配信している、信頼性の高い強震ネットワークシステム。
- 東京都防災ホームページ: 高層ビル等における長周期地震動対策を含め、都民が実践すべき具体的な防災ガイドラインを掲載。
出典: