エルニーニョとラニーニャ現象:遠くの海水温が引き起こす日本の異常気象
「今年は冷夏になるかもしれない」「冬が記録的に暖かくなるだろう」といった長期予報で、しばしば耳にするのが「エルニーニョ現象」と「ラニーニャ現象」です。南米ペルー沖という、日本から数千キロメートルも離れた太平洋の海水温変化が、なぜ私たちの暮らしに直結する異常気象をもたらすのでしょうか。大気と海洋のダイナミックな相互作用から、その仕組みを読み解きます。
太平洋をめぐる海水温と大気の「キャッチボール」
赤道付近の太平洋では、通常、「貿易風」と呼ばれる東風が吹いています。この風によって、太陽で暖められた海水が西側(インドネシア付近)に押し流され、東側(南米沖)の海域では不足した海水を補うために、海の深層から冷たい水が湧き上がってきます(湧昇)。
この大気と海洋が連動するシステムは「エルニーニョ・南方振動」(ENSO)と呼ばれ、約2〜7年の周期で不規則に変動します。
エルニーニョ現象とは
何らかの原因で貿易風が弱まると、西側に溜まっていた温かい海水が東側の太平洋中央部からペルー沖へと広がり、東太平洋の海水温が平年より高くなります。これがエルニーニョ現象です。
ラニーニャ現象とは
逆に貿易風が平年より強まると、温かい海水がさらに西側に押し付けられ、東側の冷たい湧昇流が強まり、太平洋東部の海水温が平年より低くなります。これがラニーニャ現象です。
テレコネクション:遠くの空へ伝わるドミノ倒し
南米沖の海水温の変化は、単に現地だけの問題にとどまりません。温水域の位置が変わると、活発な積乱雲が発生するエリア(地球規模の熱源)も移動します。
大気中を上昇した空気は対流圏の最上部を通り、高緯度へと流れていきますが、熱源の位置がずれることで、地球規模の大気循環の波(偏西風の蛇行など)が乱れます。このように、ある領域の変動が地球上の離れた別の場所に異常天候をもたらす現象を「テレコネクション」と呼びます。
このテレコネクションがどのように日本に影響するかについては、気象庁 (JMA) やアメリカ海洋大気庁のNOAA CPCによる観測データと気候シミュレーションを通じて、詳しく解明されています。
日本の気候に及ぼす具体的な影響
大気循環の蛇行は、日本列島周辺の夏や冬の天候を特徴づける気圧配置に影響を与えます。
| 現象名 | 日本の夏の傾向 | 日本の冬の傾向 |
|---|---|---|
| エルニーニョ現象 | ・太平洋高気圧の張り出しが弱い ・曇りや雨が多く、冷夏の傾向 | ・西高東低の冬型の気圧配置が弱い ・寒気の流入が弱く、暖冬の傾向 |
| ラニーニャ現象 | ・太平洋高気圧の北への張り出しが強い ・晴れる日が多く、酷暑の傾向 | ・冬型の気圧配置が強まりやすい ・日本海側で大雪、厳冬の傾向 |
ただし、これらはあくまで統計的な傾向であり、近年の地球温暖化や、インド洋の海水温変動など他の気候因子と組み合わさることで、エルニーニョの年であっても暖冬にならないケースなど、予測を難しくする例外的な事例も発生しています。
お役立ち情報
- 気象庁 エルニーニョ監視速報
- 日本の気象庁が毎月10日前後に更新する、太平洋の海面水温・海洋表層の監視データと、今後の最新の見通しについての解説。
- JAMSTEC アプリケーションラボ (SINTEX-F)
- 国立研究開発法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)が運用する高度な大気海洋結合モデルを用いた、世界の季節予測と気候予測の配信サイト。
出典: