上野・国立西洋美術館でモダニズム建築に浸る。ル・コルビュジエ本館と前川國男新館の鑑賞ガイド
上野恩賜公園の一角に建つ国立西洋美術館。中世末期から20世紀初頭にかけての西洋美術コレクションを誇る日本を代表する美術館ですが、その最大の魅力の一つは「建物自体」にあります。
フランスの近代建築の巨匠ル・コルビュジエが日本で唯一設計した本館は、2016年に世界文化遺産に登録されました。そして、その本館を取り囲むように建てられた新館は、彼の弟子である日本のモダニズム建築の先駆者・前川國男が設計したものです。
今回は、師弟の対話が聞こえてくるような建築の魅力と、常設展を存分に味わうための回り方をご紹介します。
ル・コルビュジエが提唱した「近代建築の原則」を本館で体感する
国立西洋美術館の本館には、ル・コルビュジエが提唱した建築理念が随所に散りばめられています。
まず前庭から建物を見上げると、1階部分が柱だけで支えられ、吹き抜けのようになっていることに気づきます。これは「ピロティ」と呼ばれる空間で、建物を地面から持ち上げることで開放感を生み出しています。
本館の内部に入ると、まず目を奪われるのが「19世紀ホール」と呼ばれる三角形のトップライトから光が降り注ぐ中央の大空間です。ル・コルビュジエはこの美術館を「無限成長美術館」として構想しました。これは、将来コレクションが増えた際に、中央のホールを中心に螺旋状に展示室を外側へ拡張していける仕組みです。
スロープを上がって2階の展示室へと向かう動線も、視線がダイナミックに移り変わるように計算されており、歩くこと自体が空間のアート体験となっています。
弟子・前川國男が本館への敬意を込めて設計した「新館」
本館の奥に位置する新館は、ル・コルビュジエの愛弟子であり、日本におけるモダニズム建築の発展に大きく貢献した前川國男によって1979年に設計されました。
前川は、偉大な師が建てた世界的な傑作である「本館」への調和と敬意を最優先に考えました。新館の外壁には、本館のコンクリートの質感に合わせた打ち込みタイル(ロッキタイル)が使用されており、落ち着いたグレーのトーンで統一されています。
新館内部の展示室は、中庭を囲むように配置されており、ガラス窓からは四季折々の光と緑が差し込みます。本館が「光と影が織りなすソリッドな空間」であるのに対し、新館は「日本の自然との調和を意識した静謐な空間」となっており、師弟の設計思想の対比が楽しめるのもこの美術館の醍醐味です。
常設展の効率的な鑑賞ルート
国立西洋美術館の常設展は、中世の板絵から印象派、そして近代絵画まで、西洋美術史を体系的に辿れる傑出したコレクションです。以下のルートで回ると、建築の構造と美術史の流れを同時に体感できます。
- 1階:19世紀ホール(スタート)
- 彫刻家ロダンの『考える人』や『地獄の門』が出迎える大空間。天井高やらせん状の構造を鑑賞します。
- スロープを上って2階へ
- スロープをゆっくり上りながら、ホールの三次元的な空間の変化を楽しみます。
- 2階:本館展示室(中世〜18世紀絵画)
- ル・コルビュジエが定めた寸法体系「モデュロール」に基づき、天井高がやや低めに抑えられた展示室。親密な空間でクラシックな宗教画や肖像画に向き合えます。
- 2階:新館展示室(19世紀後半〜20世紀絵画)
- 前川國男設計の広々とした空間へ。モネの『睡蓮』をはじめとする印象派の名画や、ピカソなどのモダンアートが並びます。中庭の緑を窓越しに眺めながらリフレッシュできます。
- 1階:新館版画素描展示室(ゴール)
- 企画に合わせて素描や版画が展示されます。鑑賞後は併設されたカフェ「すいれん」で中庭を眺めながらお茶を楽しむのがおすすめです。
お役立ち情報
- 常設展の無料観覧日: 国立西洋美術館では、毎月第2土曜日および文化の日(11月3日)などは、常設展のみ無料で観覧できる日が設定されています(最新情報は公式サイトをご確認ください)。
- 音声ガイドアプリ: ご自身のスマートフォンに専用の国立西洋美術館公式アプリをダウンロードすることで、手軽に建築や主要展示作品の解説を聞くことができます。
- 上野のミュージアムマップ: 上野恩賜公園内の観光案内所や各館のチケット売り場では、公園内の文化施設(東京都美術館や国立科学博物館など)の位置やお得な共通チケットの情報を掲載した「上野ミュージアムマップ」を配布しています。
出典: