夏の信州・渋温泉で「九湯めぐり」!レトロな温泉街の歴史と湯守の知恵
長野県山ノ内町に位置する信州の古湯・渋温泉は、大正から昭和初期の面影を色濃く残す木造建築が立ち並ぶ、極めてレトロな温泉街です。ここでは、宿泊客だけがすべてを巡ることを許された共同浴場「九湯めぐり(厄除巡浴外湯めぐり)」が古くから旅人を惹きつけてやみません。夏風が通り抜ける夕暮れ時、浴衣に下駄を鳴らしてそぞろ歩く温泉街の風情は、日本の夏の旅ならではの贅沢と言えます。
出典: Syed Qaarif Andrabi / Pexels
渋温泉の「九湯めぐり」とは?歴史とご利益
渋温泉の外湯(共同浴場)は、地元の人々が日々の生活で管理し利用している神聖な場所です。宿泊客には宿から「鍵」が貸し出され、この鍵を使って1番湯から9番湯までの扉を開けて巡ります。
それぞれの外湯は異なる源泉から引かれており、泉質や効能がそれぞれ異なります。
- 一番湯「初湯」: 胃腸に良いとされる湯。
- 二番湯「笹の湯」: 湿疹などに効能があるとされる湯。
- 三番湯「綿の湯」: 切り傷や皮膚病に良いとされる湯。
- 四番湯「竹の湯」: 痛風などに良いとされる湯。
- 五番湯「松の湯」: 脊椎病などに良いとされる湯。
- 六番湯「目洗いの湯」: 眼病に良いと伝えられる湯。
- 七番湯「七日の湯」: 外傷に良いとされる湯。
- 八番湯「神明滝の湯」: 婦人病に良いとされる湯。
- 九番湯「大湯」: 渋温泉を代表する名湯。神経痛などに良いとされる結願の湯。
それぞれの浴場で専用の手ぬぐい「祈願手拭い」にスタンプを押し、最後に温泉街を見下ろす渋高薬師に参詣して朱印をもらうことで、「九(苦)を流し、厄除け・安産・育子・不老長寿」のご利益があるとされています。
源泉100%かけ流しを守る「湯守(ゆもり)」の知恵
渋温泉の大きな特徴は、すべての共同浴場が加熱・加水・循環を一切行わない「源泉100%かけ流し」である点です。地質的な要因から非常に高温の温泉が湧出するため、湯温は何も調整しないと50度を超えることも珍しくありません。
この極上の温泉を適温に保ち、湯の品質を守っているのが、地元の住民たちによる「湯守」としての共同管理です。渋温泉では温泉の通り道であるパイプの清掃や、外湯の清掃を日替わりで分担して行っています。水で薄めずに湯量だけで温度を調節する伝統的なバルブ調整など、自然の恵みを損なうことなく人々に提供する知恵が今も息づいています。
熱々の湯を快適に楽しむ!夏の入浴実用テクニック
夏の入浴、しかも温度の高い渋温泉の外湯を巡る際は、体に負担をかけないためのスマートな工夫が必要です。
1. 水で濡らしたタオルを頭に乗せる
外湯の内部は熱気がこもりやすいため、冷たい水で絞ったタオルを頭に乗せて入浴することで、のぼせ(熱中症に似た状態)を効果的に予防できます。
2. 「分割浴」で体に熱を溜めない
一回の入浴時間を短くし、「3分入って休む」を繰り返す分割浴を推奨します。特に大湯などの熱い温泉では、無理に肩まで浸からず、足湯や半身浴から始めるのがコツです。
3. 水分・塩分のこまめな補給
外湯を数か所巡るだけでも、発汗によって体内の水分は大きく失われます。温泉街の自販機や売店で売られている地元のサイダーや湧水を、入浴前後に必ず摂取してください。
4. 湯上がりの「夕涼み」を組み合わせる
入浴後はすぐに次の湯へ向かわず、浴衣の袖から風を通しながら、石畳の道をゆっくり歩いて体温を下げる時間を設けるのが、夏めぐりを快適に完走する秘訣です。