旧古河庭園で洋館とバラ、日本庭園が織りなす大正ロマン:和洋折衷の美しい邸宅を歩く
東京都北区の閑静な住宅街に位置する旧古河庭園は、大正初期の姿を今に伝える貴重な都立庭園です。武蔵野台地の斜面という地形を巧みに利用し、高台にはクラシカルな洋館と華やかな洋風庭園を配し、低地には静寂に包まれた日本庭園を配置するという、和洋折衷の見事な調和が楽しめる名所です。
出典: Quang Nguyen Vinh / Pexels
都会の喧騒から一歩離れて、かつての財閥の優雅な邸宅の面影を残すバラの小径を歩けば、まるで大正時代にタイムスリップしたかのようなロマンあふれる休日が待っています。今回は、公園・自然担当ライターの視点から、この庭園の歴史と見どころをご紹介します。
ジョサイア・コンドルが手がけた英国風洋館とテラス式バラ園
高台に堂々と佇む石造りの洋館は、明治から大正にかけて日本の近代建築の礎を築いた英国人建築家ジョサイア・コンドル(Josiah Conder)の設計によるものです。彼は鹿鳴館やニコライ堂なども手がけたことで有名です。この洋館は、天然の真鶴石(安山岩)を用いた赤褐色の外壁と、スレート葺きの屋根が落ち着いた美しさを放っています。
この洋館の前に広がるのが、斜面を数段のテラス(段丘)状に整えたイタリア式・フランス式の技法を取り入れた西洋庭園です。左右対称にデザインされた幾何学的な花壇には、春と秋のシーズンになると、約100種200株ものバラが咲き誇ります。
バラ園には、かつての皇族や著名人にちなんで名付けられたバラや、芳醇な香りを漂わせる歴史ある品種が植えられています。レンガ造りの洋館を背景に、色鮮やかなバラが咲き乱れる様子は絵画のような美しさで、テラスからは庭園全体を見渡すことができます。
京都の近代日本庭園の先駆者・小川治兵衛による名園
バラが咲く洋風テラスを下っていくと、景観は一変し、深い緑の樹木に囲まれた静寂な日本庭園へと入ります。この日本庭園を作庭したのは、京都の円山公園や平安神宮神苑などを手がけたことで知られる、近代日本庭園の先駆者小川治兵衛(屋号「植治」)です。
中心に位置するのは、漢字の「心」の字をかたどった「心字池(しんじいけ)」です。池の周囲には、高低差を活かした「枯滝(かれたき)」や、重厚な灯籠、そして数寄屋造りの茶室が巧みに配置されています。
西洋庭園の華やかさとは対照的に、日本庭園は自然の地形をそのまま活かした野趣あふれる趣があり、池の周りの小径を歩くことで刻々と変化する景色(回遊式庭園の醍醐味)を楽しめます。新緑や秋の紅葉の時期には、モミジやカエデが池の水面に映り込み、息をのむような美しい日本の情緒を感じさせてくれます。
春と秋に開催される「バラフェスティバル」の楽しみ方
旧古河庭園が最も活気に満ちるのが、毎年5月中旬から6月上旬にかけて開催される「春のバラフェスティバル」と、10月中旬から11月上旬にかけての「秋のバラフェスティバル」です。期間中は、バラのライトアップや音楽コンサートなどが企画され、夜間開園が行われることもあります。
日中の青空に映えるバラも美しいですが、夕暮れ時からライトに照らし出される洋館とバラは、さらに幻想的でロマンチックな雰囲気を醸し出します。イベント情報は東京都公園協会の公式ウェブサイトでアナウンスされるため、訪れる前にチェックしておくことをおすすめします。
また、館内の一部は事前予約制で内覧することができ、大正時代の貴族たちが過ごした往時の贅沢なインテリアや喫茶室でのお茶を楽しむことも可能です。
お役立ち情報
- 施設名: 旧古河庭園(きゅうふるかわていえん)
- アクセス:
- JR京浜東北線「上中里」駅下車 徒歩7分
- 東京メトロ南北線「西ケ原」駅下車 徒歩7分
- JR山手線「駒込」駅下車 徒歩12分
- 開園時間: 9:00〜17:00(入園は16:30まで)
- 入園料: 一般 150円 / 65歳以上 70円(小学生以下および都内在住・在学の中学生は無料)※洋館内部の見学は別途料金・事前申込が必要です。詳しくはお問い合わせください。
- 休園日: 年末・年始(12月29日〜翌年1月1日)